HDR対応テレビとは輝度レンジを拡大する技術。4Kに反映されるとどうなる?

電気屋さんに足を運ぶと大画面の薄型テレビが多数展示してあります。
大画面のテレビを見ていると、見やすいテレビと違和感のあるテレビがあるのに気づくと思います。
その理由は解像度にありました。
テレビの画面は大きくなればなるほど、解像度を高める必要があります。
そのため、4K解像度が注目を集めるようになりました。
また4kテレビが登場し話題になったのが2015年。
2015年は4Kテレビ元年と呼ばれていました。
しかし電気製品の進化は早いもので、2016年にはいるとHDRが登場し話題に。
勘がいい方はわかると思いますが、この流れは先程の4kテレビと同じなのです。
よって、2016年はHDRテレビ元年と呼ばれるようになりました。
それでは、現在主流の4KテレビとHDRとの関係はどのようになっているか説明していきます。
HDRとは?
HDRとは「High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)」の3つの頭文字を取りだしたものです。
それは、映像に埋め込むことができる明るさ情報(輝度)のレンジ(範囲)を拡大する技術を意味します。
今まで、映像をより美しくするためにフルHD(1920×1080ドット)や4Kといった「解像度」が重要視されてきました。
それから、自然界の色をリアルに再現することを目指した「色域」は、徐々に機能の向上が図られてきました。
ところが今になってようやく、映像の質を向上するために明るさ情報が取り入れられ始めたのです。
輝度(明るさ)のレンジ(範囲)を拡大するとは?
私たちが生活している現実の世界では、太陽光や直射日光にさらされた白壁、サーチライトなどを見るとまぶしく感じます。
これらのまぶしく感じる光を映像に記録するために必要になるのが輝度レンジです。
HDR技術では、光を記録する範囲を現在の100nitから最大で10000nitまで、約100倍に拡張することが可能です。
テレビがHDRに対応するようになると、現実に極めて近い光の世界を視聴者に届けられるようになります。
直射日光が当たる道路は10000nit、日陰の壁は300nitなど、現実の世界には非常に広い範囲の明るさが存在しています。
しかし、従来の映像である「SDR(Standard Dynamic Range)」の「ピーク輝度」(最大の明るさ)は、規格によって100nitに決められていました。
今まで見ていた地上デジタル放送、ブルーレイなどの映像は、現実世界のリアルな明るさをまったく再現しようとしていなかったということ。
HDR技術は、この現実界のリアルな明るさを再現しようという試みだったのです。
テレビから出る光が直射日光に近いまぶしさを持つようになったら、ただ情報量を増やすだけだった4K技術を越える衝撃を見ている人たちに与えるということになるでしょう。
4Kテレビや8Kテレビとはどんな意味
画素(ピクセル)でよく耳にするのは、デジカメの画素数ではないでしょうか?
このデジカメは1200万画素です。
このように具体例をあげると、わかりやすいですよね。
また、640×480ピクセルの画像という使い方もします。
640×480ピクセルの画像とは、横640個、縦480個の点を並べて表現されていることを示しています。
この点の1つ1つがいろいろな色を発することで、様々な画像が創られます。
テレビでは、大画面になるほど1画素あたりの面積が大きくなってしまって、画面が粗くなるという問題がありました。
そこで4Kテレビが開発されたのです。
4Kテレビの4Kとは、4k解像度のことを指します。
4K解像度とは、横4,000×縦2,000前後の画面解像度に対応できる映像の呼び方です。
Kは1,000前後を表す「キロ」のことで、横・縦の解像度を同時に表せば4K2Kとなります。
1000mの距離は1kmとも書きます。小文字の「k」は1000倍を意味する記号です。
それに似ていて、デジタルの世界では2の10乗=1024の事を大文字の「K」で表わします。
今までのテレビは横1920×縦1080ピクセルの画素で画面が成り立っていました。
これに対して4Kテレビの画面は、縦と横がそれぞれ2倍の3840×2160ピクセルで成り立っています。
画素の数でいけば2×2=4で4倍。
8Kテレビとなると、4倍の7680×4320ピクセルで画面が作られるということです。
それぞれ横方向のピクセル(画素)数が大体4000と8000になるので、4K、8Kと呼んでいます。
HDRテレビとは、4Kテレビに輝度のレンジを拡大する技術を取り込んでより高画質にしたものです。
HDRテレビが次々と発売された
ソニーが広告のキャッチコピーで、「2016年は、まさに“HDR元年”」と打ち出しました。
本当に2016年はHDR元年なのかもしれません。
テレビメーカ各社から、4K HDRテレビが次々と発売されました。
実は、HDR(ハイダイナミックレンジ)は、まず4K動画配信や「Ultra HD Blu-ray」に新しい映像規格として採用されていました。
HDRでは、映像の明るい部分をより明るく、暗い部分をより暗く表現する輝度の情報を大きく拡大するので、モノの質感や立体感が高まります。
そのため、ほとんどの最新型4KテレビはHDRに対応しています。
HDR対応には気をつけよう
最新型4KテレビがHDRに対応しているといってもテレビ販売店に並べられているパンフレットなどには、HDRテレビの輝度(nit)は公表されていません。
肝心のピーク輝度は、どの機種にしてもはっきりしていません。
調べてみると、多くのメーカーにおいて、HDRテレビのハイエンドモデルのピーク輝度は1000nit超という設定です。
HDR技術では輝度レンジのピークを10000nitにできるというのに。
1000nitは、ハイエンドモデルのことなので、それ以外のHDRテレビはさらに低い設定です。
現在、メーカー各社が「HDRテレビ」といっているものは、「HDR10の入力信号に対応しているテレビ」のことです。
現時点では、HDRテレビが発揮できる実際のピーク輝度には明確な基準がありません。
HDR10の信号を入力して表示できさえすれば、HDRテレビとうたうことができます。
ですので、輝度が低くてコントラストが高くなくても、HDR対応をうたっているテレビあるわけです。
店頭に並ならんでいるHDRテレビは、まだまだ製品により大きな差があるのが現状です。
ところで、シャープは9月16日、世界で初めてHDRに対応した85V型8Kディスプレイ「LV-85001」を10月30日に発売すると発表しました。
価格はオープンプライスですが、市場想定価格は1600万円前後らしいです。
いまだ「HDRテレビ」は、黎明期。
HDRテレビがどちらに向かっているか手探り状態のようですね。
メーカーは「4K+HDRテレビ」ブームを望んでいるのでしょうけれど、一般消費者としては様子を見ている段階ではないでしょうか。